2.ファンド持分
ファンドは、一般の事業のほか、有価証券や不動産への投資、スタートアップやイノベーション、共感や支援に基づく地域活性化事業、SDGs関連事業などに幅広く活用されています 。
なお、第二種金融商品取引業者が販売するファンドを、「二種ファンド」と呼ぶことがあります。
ファンド持分(集団投資スキーム持分)の定義
ファンド持分は集団投資スキーム(collective investment scheme)持分とも呼ばれるもので、以下の3つの要素がある権利を包括するものです。
- 権利を有する者(出資者)が金銭等を出資又は拠出し、
- 出資又は拠出された金銭等を充てて事業(出資対象事業)が行われ、
- 出資者が出資対象事業から生ずる収益等の分配を受けることができる権利であること
ファンドの類型
ファンド持分はみなし有価証券とされ、民法の任意組合契約、商法の匿名組合契約(TK)、投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく投資事業有限責任組合契約(LPS)、有限責任事業組合契約に関する法律に基づく有限責任事業組合(LLP)といった組合型ファンド持分がこれに含まれます。
任意組合契約
任意組合契約は、組合員が出資し、業務執行を行わない組合員も含めて共同で事業を行い、組合員全員が無限責任を負います。
匿名組合契約
匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配する合意を行うことによって成立します。ファンドの運営は、匿名組合出資を受ける営業者が行います。
投資事業有限組合契約
投資事業有限組合契約は、組合員が出資を行い、共同で株式の保有等の事業を行うことを合意することによって成立します。投資事業有限責任組合の運営は、無限責任組合員が行います。
有限責任事業組合
有限責任事業組合は、有限責任組合員のみで構成されます。
組合の比較
任意組合 | 匿名組合 | 投資事業有限責任組合 | 有限責任事業組合 | |
---|---|---|---|---|
根拠法 | 民法 | 商法 | 投資事業有限責任組合契約に関する法律 | 有限責任事業組合契約に関する法律 |
構成員 | 組合員のみ(無限責任) | 営業者(無限責任)と匿名組合員(有限責任) | 無限責任組合員と有限責任組合員 | 組合員のみ(有限責任) |
契約形態 | 組合員全員を当事者とする契約 | 営業者と匿名組合の二者間契約 | 組合員全員を当事者とする契約 | 組合員全員を当事者とする契約 |
法人格 | なし | なし | なし | なし |
登記の要否 | 不要 | 不要 | 要 | 要 |
組合財産の帰属 | 組合財産の帰属 | 営業者 | 総組合員の合有 | 総組合員の合有 |
業務執行 | 総組合員 但し、組合契約で業務執行者を定めることができる |
営業者 | 無限責任組合員 | 総組合員 但し、組合の業務執行の一部を特定の組合員に委任できる |
事業の範囲 | 制限なし | 制限なし | 投資事業有限責任組合法3条1項に掲げるものに限定。株式、債券、金銭債権、匿名組合契約の出資持分又は信託の受益権の取得・保有、貸付けなど。外国法人の有価証券は50%未満。 | 次の業務以外は制限なし ①性質上組合員の責任の限度を出資の価額とすることが適当でない専門家の業務 ②組合の債権者に不当な損害を与えるおそれがある業務 |
募集又は私募の取扱い
ファンドが新規の出資者を募る際に、ファンドの事業者が自ら出資者を募るのではなく、第二種金融商品取引業者に対して、ファンド持分の販売、勧誘の委託をすることが行われます。第二種金融商品取引業者がファンドの事業者から委託を受けて、ファンド持分の販売、勧誘を行うことを、募集又は私募の取扱いといいます。
一口メモ資産の流動化
資産の流動化とは、流動性の低い資産の保有者(オリジネーター)が、当該資産を譲渡等により他の主体(ビークル)に移し(保有者の倒産リスクから隔離するための措置)、資産から得られる収益の分配を受ける権利を証券にして販売することにより資金を調達するもので、証券化ともいわれます。なお、収益がビークルと投資者で二重に課税されないように、導管体(信託や組合等)が利用されます。
流動化の手法の一つである合同会社と匿名組合を用いたスキーム(GK-TKスキーム)では、ビークルに合同会社を用い、資金調達は匿名組合への出資と金融機関からの借入を組み合わせます。オリジネーターが信託銀行等に不動産を信託して信託受益権を取得し、匿名組合の営業者である合同会社が、調達した資金を原資として信託受益権を譲り受けます。匿名組合の分配額は、組合員段階でのみ課税されます。